一番便利な無料「オンラインストレージ」はどれか(下) インターネット-最新ニュース:IT-PLUS
一番便利な無料「オンラインストレージ」はどれか(下)
無料で使える「オンラインストレージ」サービス比較の後編。ビジネスでの利用において重要となる「ファイルの共有」機能の使い勝手、そしてスムーズにデータをやりとりするうえで大切なアップロードのスピードを中心にチェックしていく。また、各サービスならではの特徴および、どのような用途に向いているかについてもまとめていく。
取り上げるオンラインストレージは以下の5つのサービスである。サービス概要や使用方法は前編の「一番便利な無料『オンラインストレージ』はどれか(上)」を参照してほしい。
サービス名 運営会社 URL 有料オプション
Dropbox Evenflow http://www.getdropbox.com/ あり。容量追加
firestorage ロジックファクトリー http://firestorage.jp/ なし
Oosah Oosah http://www.oosah.com/ なし
quanp リコー http://www.quanp.com/ あり。容量追加
SkyDrive マイクロソフト http://skydrive.live.com/ なし
■ファイルの共有機能
オンラインストレージサービスのファイル共有の基本的な手順は、共有設定によって発行されるURLをメールなどで共有したいユーザーに通知し、そのURLにアクセスすることでファイルのダウンロードが可能になるという流れだ。どれも似たり寄ったりと思うところだが、各サービスそれぞれの特徴がある。共同で企画をまとめたり、仕様を決めたりするために1つの文書ファイルを複数のユーザーで編集、共有したいという目的には「Dropbox」と「SkyDrive」が優れている。
Dropboxは、ファイルを共有したい相手ユーザーもDropboxの専用アプリケーションをインストールする必要があるのでハードルは高い。また大容量ファイルを手軽に送りたいという用途には向いていないものの、軽めの文書ファイルの共有には最適といっていい機能がそろっている。
フォルダーの共有を設定すると、メールで共有相手のユーザーに通知される。その通知に書かれたURLにアクセスするだけで「My Dropbox」(オンラインストレージとパソコンのファイルを同期するためのフォルダー)内に共有化されたフォルダーが作成され、フォルダー内のファイルは自由に編集が可能になる。
このDropboxによる共有の利点は2つ。1つは共有に参加しているユーザーの誰かがファイルを編集すると、ファイルが変更されたことを全員に通知してくれる。仕事の進行具合を逐一チェックできるので便利だ。2つ目は、前編で紹介したようにDropboxでは更新履歴(過去に編集したデータ)が残るので誰かが誤って編集したり、削除したりしても元に戻せることだ。
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Dropboxでファイルを共有するには、ブラウザーで共有用のフォルダーを作成し、共有したい相手のメールアドレスを入力する
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共有しているユーザーの誰かが、ファイルに変更を加えると専用アプリがポップアップで知らせてくれる
SkyDriveは、どのユーザーも自由にアクセスしてファイルをダウンロードできる「公開フォルダ」とアクセスできるユーザーを限定できる「共有フォルダ」の2種類が用意されている。共有フォルダーは、相手もWindows Live IDが必要という条件がついてしまうが、ユーザーごとに権限を設定できるのが魅力だ。権限は共有フォルダー内のデータを自由に変更できる「編集者」、ファイルのダウンロードのみが可能な「閲覧者」の2種類があり、複数のユーザーで文書ファイルを編集したい場合は「編集者」に、資料などのファイルの配布には「閲覧者」にと使い分けられる。
ただし、編集作業はブラウザー上で実行できず、ファイルを編集するには一度パソコンにダウンロードしてまたアップロードする必要があるので、使い勝手ではDropboxに劣る。とはいえWindows Live IDだけで利用できる手軽さは大きな武器だ。
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SkyDriveの公開フォルダーは、生成されるURLを相手に伝えれば、だれでもファイルをダウンロードできる
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共有フォルダーでは、ユーザーごとに「閲覧者」と「編集者」の2つの権限を設定できる
単純に相手にファイルを渡す、見せるという点では「firestorage」と「Oosah」が有力な選択肢となる。firestorageは、ファイルのアップロード時に発行されるURLを相手に伝えるだけでOKとシンプルでわかりやすい。しかも、URLへのアクセスにはパスワードを設定することも可能なので、セキュリティーを強化できる。ファイルを削除するまでの保存日数やダウンロード回数を決められたりとファイルを公開するうえでの細かな設定も用意されている。
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firestorageでは、アップロード時に発行されるURLにアクセスすれば、だれでもファイルをダウンロード可能だ
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パスワードを設定できるのでセキュリティー面の安心感も高い
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Oosahでは、ファイルをダブルクリックし、「Share」を押すことで表示されるURLを相手に伝えればOKだ
Oosahもfirestorageと同様で、アップロードしたファイルをダブルクリックすると表示されるURLを共有相手に伝えるだけと簡単だ。ただし、前編で紹介したようにOosahはアップロードできるファイルが動画や画像などメディア系ファイルに限られるのが難点となる。例えば、社員旅行の写真の公開といった使い方がよいのではないだろうか。
ここで紹介しているサービスで残念なのは「quanp」だ。無料のサービスではファイルを他のユーザーに公開する機能がない。有料の「Quantum」または「Standard」に加入する必要がある。なお、有料会員が公開しているファイルへは無料会員でもアクセスすることができる。
■転送スピードを計測する
ビジネスで使う場合には、アップロードの安定度も重要なポイントになるだろう。そこで、100メガバイトのデータをアップロードするのにかかる時間をチェックしていく。使用したパソコンはCPUが「Core 2 Duo E6750」で、メモリー2ギガバイト、ハードディスク500ギガバイト、OSはウィンドウズXPというスペックである。なお、インターネット回線はNTT東日本の「Bフレッツ ハイパーファミリータイプ」で、通常のアップロード速度のテストでは61.53メガビット秒という環境だ。またSkyDriveについては1ファイルあたり50メガバイトという制約があるため、100メガバイトのファイルを2つに分割してアップロードした時間になっている。
100MBのアップロードにかかった時間
サービス名 アップロード時間
Dropbox 21分47秒
firestorage 2分2秒
Oosah 4分18秒
quanp 4分42秒
SkyDrive 20分45秒
結果は上記の表の通りだが、firestorageが圧倒的な速度となった。大容量ファイルのやりとりに向いていることを証明している。Oosah、quanpも安定した結果を出した。その一方で、共有に便利なDropboxとSkyDriveは苦戦している。大容量ファイルの公開よりも、多彩な機能を活かして文書ファイルを共有するのに向いていることがわかる。ただし、これは筆者の環境で行ったテストであり、どの環境でも同じ傾向になるとは限らないので参考程度にとどめてほしい。
■各サービス独自の機能とは?
最後は、各サービス独自の機能とどの用途に向いているかをまとめていこう。
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便利な共有機能を持つがすべて英語なのがネックのDropbox
Dropboxの大きな魅力は、パソコン上にある「My Dropbox」にファイルを保存すればオンラインストレージと自動的に同期する点にある。自宅、会社、外出先のノートパソコンとどの環境でも、専用のアプリケーションさえインストールしておけば、最新の状態を呼び出すことができる。
WindowsだけでなくMac OS XやLinux向けの専用アプリケーションも用意されており、話題の「iPhone」からもアクセスが可能とOSを問わずに使える幅広さがある。一方、日本語に対応していないため、すべての説明は英語で、共有する相手によっては戸惑うことも予想される。そこが一番のネックではないだろうか。
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ダウンロード回数などがわかる集計機能も便利な「firestorage」
firestorageはファイルのアップロードとダウンロードに特化し、シンプルに使えるのが魅力だ。それほど高機能ではないが、ファイルがダウンロードされたことを通知してくれる機能が役立つ。公開する相手が1人ならば、その人が無事にダウンロードしたことがすぐわかる。
容量無制限でアップロードが可能で、速度も安定しており、大容量ファイルを渡したいときには一番有力な選択肢とはいえる。ただ、ビジネスで使うにはサイト画面に広告が多いのが気になる。無料でサービスを維持するには必要なことだが、ファイルを渡す相手によっては失礼になる可能性もあるので注意したい。
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YouTubeやFlickerなどのサイトと連携できる「Oosah」
Oosahは、「YouTube」や「Flicker」などメディア共有サイトと連携できるのが特徴だ。例えば、アップロードした動画をYouTubeのメニューにドラッグ&ドロップするだけでYouTube上に公開できてしまう。多くの人と動画や画像を共有したいときに便利なほか、プロモーションでの活用にも有効だろう。また、iPhoneからもアクセスが可能となっている。
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指定したフォルダを監視して、ファイルが保存されると自動的にアップロードする機能も備える「quanp」
quanpは、日本の大手メーカーであるリコーがサービスを運営しているという安心感がある。有料サービスの「Quantum」に加入すれば、電話サポートも受けられるというほかのオンラインストレージにはないサービス体制も信頼できる。また、専用アプリケーションの「quanp.on」は独特のインターフェースだが、ファイルを視覚的に管理できる魅力がある。
さらに、指定したフォルダーを監視して、ファイルを保存すると自動的にオンラインストレージにアップロードする機能もあり、重要なファイルの自動バックアップソフトとしても活用できる。無料サービスでは共有機能を持たないが、ファイルの管理に関しては一番優れているのではないだろうか。
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大容量のファイル共有もOKとバランスのいい「SkyDrive」
最後はSkyDriveだが、自動バックアップなど特徴的な機能はほとんど持たないが、バランスに優れている。5ギガバイトという大容量スペースを持ち、特定のユーザーと共有できたり、一般に公開したりとさまざま目的に使えるのが最大の魅力だろう。ただし、1ファイルあたり50メガバイトという制限があるため、大きなファイルの受け渡しには向いていない。マイクロソフトが運営している安心感はあり、オンラインストレージを試しに体験してみたい人には、一番いいのではないだろうか。
◆ ◆ ◆
ここまで、無料のオンラインストレージを比較してきたが、それぞれのサービスは無料ということもあり、アップロードしたファイルの管理やサービス継続などを基本的に保証していない。何か不具合があれば、ファイルが消失したり、流出する可能性がないわけではない。個人情報や企業の機密情報の保存や受け渡しには使用しないほうがよいだろう。万が一、流出した際にも大きな損害を被ることがないかよく考えたうえで利用してほしい。
[2008年10月24日]
-筆者紹介-
芹澤 正芳(せりざわ まさよし)
フリーライター・エディター
略歴
学生時代に編集プロダクションの求人広告に応募して、この世界に飛び込む。その後、パソコン雑誌の編集者を経てフリーへ。ソフト・周辺機器・自作などパソコン関係の記事を幅広く執筆している。現在愛用しているモバイルノートは東芝ノートPC20周年記念モデルの「dynaBook SS SX/190NR」。実用性はもちろん重視するが、圧倒的に薄いなど見た目にインパクトのある製品に弱い。
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